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発泡スチロールのような愛 4

添えられたメッセージカードには「去年の夏が終わる頃に憂くんと出会えたことが私の2016年一番の幸運でした」と書かれていた。私は「23歳の夏が22歳の夏よりも楽しくなればいいなと思います」と書いていた。きっとお互いに不確実ながらもやさしい発泡スチロ…

発泡スチロールのような愛 3

「腕に飼われた海月は海を知らないから懐かしまないでいいよね、知ってしまったら悲しくてなげいてしまう」確かにそうだと思った。あの二匹の海月は海を知らないから海に帰ることもない。その腕の水槽の中で毎日ささやかれる愛にこたえるかのように泳ぎ続け…

発泡スチロールのような愛 2

間違いだったと思ったから涙を流したのか、すんなりと夢が叶ってしまった呆気なさに涙を流したのか、それともただ嬉しくて涙を流したのか、ただ悲しくて涙を流したのか、一体何の涙なのかよくわからなかったけど泣き止むまでその親指をつかんでいた。私は親…

キツネたちの季節

私は挨拶代わりに手でキツネをつくる癖のあるあの子が好きだった。凛とした空気をまとったどこにも隙のない綺麗なあの子。毎月おすすめの本を交換し、季節ごとにプレイリストをつくって聴きあっていた。その子といたときは時間を過ごしたのではなく、季節を…

発泡スチロールのような愛

例えば、たとえばの話。痛みや傷痕に伴っていだく「愛しい」という感覚が、痛みや傷痕が消えてしまったとき、その感覚の寄りそう場所がなくなったときにこそ大きくなればいいなと思うような日もあって、そもそも痛みや傷痕を作ってしまったことが間違いだっ…

理由もなくさみしい人たち

今年はよく「桜ノ宮も桜が綺麗らしいよ」という話を聞いた。先日でその話も4回目だった。その度に「あ、聞いたことある、綺麗らしいね」と答える。私にとって桜の季節のそのような会話の中で「桜ノ宮の桜が綺麗だった」と言う人が居ないことだけが救いだと…

確か梅雨があけた頃だった

「新居を探すからついてきて」と言うからついていった。私はそのときはじめて大国町という街に行ったけど、難波の隣駅、歩いて10分もかからないとても近いところなのにどこか遠くまで来てしまった気持ちだった。その人は出会い系サイトを介して以前にただ一…